顎口腔系システムの正しい診査・診断

「噛み合わせ(咬合)」とは、その名の通り上下の歯の接触の仕方を言います。
しかし、そこに関わる組織は、歯のみならず歯を支える歯周組織、頭部~顎~首にかけての咀嚼(そしゃく)筋群、顎関節と幅広く、これらの調和のとれた働きによって、はじめて快適で安定した長期にわたって健康な状態を維持できる咬合、つまりは顎口腔系のシステムが構成されるのです。
顎口腔系システムが崩れることで生じる問題
顎口腔系システムが崩れることによってどんな問題が起きるかというと、歯に注目してみれば、過度な負荷がかかる歯は虫歯や歯周病になりやすくなります。
また、筋肉に不調和が生じていれば、筋肉のコリ・痛みとして症状が出ます。進行して関節の障害に進展すれば、いわゆる顎関節症状(顎がガクガク音が鳴る、口が開きにくい)が生じてしまいます。
咬合に起因する諸問題
- 歯の摩耗
- 根の治療を行った部分の治癒不全
- 歯頸部(歯の根元)の欠損
- 歯の破折
- 歯の移動
- 顎関節症
- 歯周病
- 筋肉のコリ、痛み
解剖学的な見地からの咬合調整が歯だけではなく
全身の健康において必要です
噛み合わせが悪いと聞くと、身体のゆがみや心身的な問題と関連づける方も中にはいらっしゃるかと思います。
しかし、我々が患者様にお話しするのは、解剖学的・科学的な見地に基づいた論理的な内容のみです。模型、口腔内の写真等の詳細な資料から、現在の咬合状態について十分に理解、納得していただいた上で実際の診療は行われます。
一般に歯科の疾患は進行性であり、自然治癒することなく、時間の経過と共に悪化していきます。
つまり、「今痛くないから大丈夫」ということではないのです。
自覚症状が現れるほど状態が悪化する前にその前兆に気付けること、また、悪化してしまった時に再発予防につながることが重要であり、そのためには、適切な咬合の診査・診断が必要になります。
そして、それが結果として患者様の生涯にわたっての健康、楽しい食生活、自信の持てる笑顔に結びつくものと考えております。
咬合を適切に評価できる医師のもとで受けるべき

咬合の問題を放置すれば、特定の歯に負担をかけ、結果その歯の寿命を縮めることになります。これはインプラントも同様です。
また、残念なことに歯科治療が新たな咬合の問題を作ってしまっている症例も目にすることがあります。痛みを抑える治療や見た目を良くする治療を行っても、咬合力のコントロールがうまくできていなければ更なるトラブルの原因を作ってしまいかねません。
歯科治療もさまざまな分野がありますが、虫歯・歯周病治療、インプラント、入れ歯治療等すべてにおいて顎口腔系のシステムに対する理解は診療の基盤となるべきものです。
歯は一生涯付き合うパートナーです。現状の改善だけではなく、将来を見据えた治療のために、適切な診査・診断が行える医師のもとで治療を受けることを強くお勧めします。
咬合状態のチェックは欠かせません
現状、日本の多くの歯科医院は治療中心の歯科診療を行っています。近年、予防歯科の関心が高まっていますが、欧米諸国に比べると遅れをとっているのは事実です。
予防歯科と言えば、医院でのクリーニングをイメージする人も多いかと思いますが、それは本質的なものではありません。
疾患の原因である細菌(いわゆる歯垢、プラーク)のコントロールを軸に、リスクファクターとなりうる咬合状態のチェックや生活習慣の改善等、総合的に患者様の健康を守ることが本質的な予防歯科であると考えています。
定期的な咬合状態のチェックが大切です

特に診療の延長として重要になってくるのは、治した部分を含む咬合状態の定期的なチェックです。
経年的な歯の摩耗・移動によって、わずかながら咬合の状態は変化していきます。それが新たな問題を引き起こしていないか?安定した状態を保っているか?これにはプロの目による診断が不可欠です。
そして、患者様にはご自身の状態をよく理解して、どうすれば良いのかを知る権利があります。
歯科疾患が予防可能であることが、世界的に認知されており、先進国における歯の寿命はここ数十年で大きく伸びてきました。
ぜひ、みなさんにも一生ものとしてご自身の歯に自信を持っていただきたいと思います。